東京高等裁判所 昭和58年(ネ)504号 判決
当裁判所も、控訴人の請求を失当とするものであり、その理由は、次のとおり訂正・付加するほか、原判決の理由欄に記載したとおりであるから、ここにこれを引用する。
一 原判決一八枚目表第九行の「との記載」から同第一〇行の「固定された」までを「として、ノブに装着されていない状態でも布に固定されている」と訂正する。
二 原判決二一枚目表第二行に「ハ行」とあるのを「八行」と訂正する。
三 原判決二三枚目表第一〇行に続けて、「また、控訴人が被控訴人の製品であるとして提出した検甲第一一号証を同様に装着した場合においても、右におけると大きな差異はなく、その使用を継続する内にウレタンホームが下方などにずれるであろうことは、容易に推認しうるところである。」と付加する。
四 原判決二四枚目裏第八行の後に、次のとおり付加する。
「なお、控訴人は、被告製品のウレタンホームが下方にずれた場合でも、下側を覆うことに変わりはないから、作用効果に変わりはない旨主張するが、その場合にはウレタンホームに覆われなくなつた正面部及び周側部の一部について前記<1>ないし<3>の作用効果をあげることができないことは明らかであり、本件考案と作用効果が変わらないということはできないから、右主張は採用できない。
また、控訴人は、本件考案の作用効果のうち主要なものは、右<1>ないし<3>の作用効果ではなく、請求の原因3の(二)の(4)記載の装飾的効果にあるとして、被告製品が本件考案と均等の構成を有する旨主張する。しかし、前記甲第一号証によれば、本件明細書の考案の詳細な説明の記載中には、右(4)に相当する作用効果の記載があることは認められるものの、特にこれが主要な作用効果であることを認めるに足る記載はなく、かえつて、本件考案の実用新案登録出願前においても、ドアノブ等を布又は毛糸等で覆う程度のことは一般に知られかつ行われていたこと(これは、当裁判所に顕著な事実である。)を考えれば、本件考案においては、その主要な作用効果は、むしろ、前記<1>ないし<3>にあり、右(4)の作用効果は、右<1>ないし<3>の作用効果に比し、むしろ副次的なものとみるのが相当であるから、控訴人の右主張は、その前提に誤りがあり、失当といわなければならない。
五 原判決二五枚目表第一一行から同二六枚目表第一〇行までを、次のとおりに訂正する。
「しかしながら、仮に、発明ないし考案を特許請求の範囲ないし実用新案登録請求の範囲に文章として過不足なく厳密に表現することが困難であること及び発明者と模倣者との間の公平の観点等から、特許請求の範囲ないし実用新案登録請求の範囲に記載された構成要件のうち、比較的重要度の低いものを省略あるいは変更して実施した場合に、これが一定の制約のもとに、いわゆる不完全実施ないしは改悪的実施として、当該特許権ないし実用新案権の侵害とされることがありうるとしても、被告製品は、前示のとおり、本件考案における前記<1>ないし<3>の主要な作用効果をあげるために不可欠である前記二の(2)の構成と異なる構成をとり、したがつて、右の作用効果をあげえないものであるから、その製造、販売等を、いわゆる不完全実施にあたるものとして、本件実用新案権の侵害とみる余地はないといわなければならない。
以上のとおりで、控訴人の本訴請求は失当であり、これを棄却した原判決は正当であつて本件控訴は理由がないから、これを棄却することとする。